『ザ・ファイター』(デヴィッド・O・ラッセル)

最高!最高!最高!ととりあえず芸もなく連呼しちゃうんですが、実際どう見たって最高なんだからしょうがないでしょう。


まず役者陣の顔つきがたまらない。マーク・ウォルバークの出す甲高い声もハマってるし、とかく映画を重くしがちであんま好きじゃないクリスチャン・ベイルも今作では自分では気付かない痛々しさみたいなのをうまく表現してて大変素晴らしい。(あんな顔してあんな声であんな強気にしゃべるんですから!)お母さんのメリッサ・レオを始めとする女たちも皆圧倒的。この女性陣がしゃべりまくりののしりまくり暴れまくりで凄いんですが、それと対のような形で配置される父のジャック・マクギーとセコンドのミッキー・オキーフという寡黙な男二人の存在感も凄く良い。ヒロインのエイミー・アダムスの相手を突き刺すような目つきも印象的。



映画の中盤、話の転換点でマーク・ウォルバークがボクシングへの復帰を決意してエイミー・アダムスを自宅のアパートに残したまま黙々とジムへと歩いて行く姿の素晴らしさに涙腺が緩んでしまったんですけど、それは後にクリスチャン・ベイルエイミー・アダムスの家へと歩いて行く姿へと重ねられることでなおさら感慨深いものになります。それでまたこのクリスチャン・ベイルエイミー・アダムスの二人のシーンが良い。切り返しがばっちり決まってカサヴェテスじゃん、とか思ってしまってああ、もうダメと、私は涙を抑える事が出来ませんでした。



で、このクリスチャン・ベイルエイミー・アダムスのシーンに顕著なようにこの映画では軒先でのシーンが多く出てきます。誰かが誰かの家に行くっていう場面で物語を進めて行く。私の記憶によれば全部で8回出てくると思うんですけど、それぞれ色んな撮り方してて全部素晴らしいです。同じ場所に人が立っている。でもそこにははっきりとした境界線(扉、窓)がある。その境界線をどういかすか。こちらに引き寄せるのか、向こうに行くのか、あるいはインターホンで追い払うのか、はたまた裏口から逃げてしまおうとするのか。考えてみれば当たり前なんですけど、軒先にはこういう面白さがある。その境界線を巧みに活用しながら人間関係を描いているのが大変面白かった。



とかく単調になりがちなボクシングの描写も良いです。もうラストね、マーク・ウォルバークが反撃し始める時私は思わず座席から立ち上がって喝采を送りたい気分になりました。とりあえず今週金曜まで早稲田松竹でやってるんで未見の方は授業さぼってでも駆けつけて下さいまし。


石田