『エンター・ザ・ボイド』

輪廻や死後の世界にそれほど興味がないので、映画の筋自体は特に語れるものは無かった。


ただ俺もいずれは死ぬので、作中で語られる宿命やら死の直前のトリップだとかいう話にはちょっと惹かれるものがあった。
この映画が嫌いな人でも、死に全く無関心でいられる人は少ないだろうし、そういう意味では多分観なかったことにはできない類の映画になるだろう。



登場人物に眼を向けると、謎が深くてかつその謎に説明が足りてない感じがまさに『赤目四十八瀧心中未遂』の尼崎のボロアパートの住人にそっくり。


麻薬をやったことがないから、麻薬を吸う前のジャンキーの自己弁護も単に自堕落を押し付けられる苛立ちしか感じなかったが、魔界村みたいな世界観の新宿歌舞伎町を一人称視点で歩く胡散臭さが心地よく、気持ち悪く吐き気を催すシーンがてんこ盛りな一方、ここが地獄だとしたら気持ち悪くて当然だと思えてくるのでその暴力性が許される。


この世界観を担保に暴力を作り上げるという構図自体が素晴らしい。



あと空間の捉え方がクラインの壺的っていうか、カメラがチューブの中に吸い込まれてってもう一方の口から出てきたと思ったら実はそこは元の空間だったみたいなカットがあってそこは超しびれた。


クラインの壺ユークリッド空間では4次元以上でないと表現出来ないので、私達は『エンター・ザ・ボイド』を観ることによって擬似的に4次元空間を体感出来ることになる。
「3Dじゃ、どやー」なんて言ってる映画より断然先端を行っていることになる。


全体的に撮影は革命的すぎるくらい良かった。

今江