『ナイト・アンド・デイ』(ジェームズ・マンゴールド)

やり過ぎと慎ましさの共存。冒頭の飛行機の墜落から始まって、カーチェイス、廃墟での銃撃戦、小島でのヘリコプターの襲来など、めまぐるしくシーンが交代していく本作は適宜効果的な省略をはさむ事によって全体としては透明な印象に収まっている。「もうこのシーンは充分撮った。さあ次のシーンに移ろうではないか。なあに、シーンの移動を描く必要はない。キャメロンを眠らせておけ。彼女が目を覚ましたら撮影再開だ。」監督マンゴールドのこんな声が聞こえてくるかのようだ。実際私たちはどうやってクルーズがキャメロンをトウモロコシ畑から自宅に送り届けたか知らないし、どうやって彼がヘリコプターを撃退したかも、銃撃戦のさなか敵の館から二人がオートバイでどうやって脱出したのかも知らない。しかし省略を経てその分残った画面は充実したものばかりであり、そこには素晴らしい笑いが(サングラスを拾ってくれる赤ちゃん!)、スタイリッシュなアクションが(バイクに乗ったキャメロンがクルーズをまたぎながら拳銃を撃つかっこよさを見よ!)、心震えるラブシーンが(とりわけラストは涙が止まらなかった)溢れている。


石田晃人