2010-01-01から1年間の記事一覧

『ナイト・アンド・デイ』(ジェームズ・マンゴールド)

やり過ぎと慎ましさの共存。冒頭の飛行機の墜落から始まって、カーチェイス、廃墟での銃撃戦、小島でのヘリコプターの襲来など、めまぐるしくシーンが交代していく本作は適宜効果的な省略をはさむ事によって全体としては透明な印象に収まっている。「もうこ…

『エンター・ザ・ボイド』

輪廻や死後の世界にそれほど興味がないので、映画の筋自体は特に語れるものは無かった。 ただ俺もいずれは死ぬので、作中で語られる宿命やら死の直前のトリップだとかいう話にはちょっと惹かれるものがあった。 この映画が嫌いな人でも、死に全く無関心でい…

『人形佐七補物帖 めくら狼』(マキノ雅弘)

「明るく楽しいマキノ」という風評をひっくり返すことになりかねない、不気味で暗い作品。不意に手から滑り落ちた化粧具や仏像、あるいは無造作に放り出された草履の不吉な印象はぬぐい去られることなく、持ち主たちはあっさりと殺されるだろう。ほとんど正…

バグダッド・カフェ

先日ブックオフで購入して見ました。ブックオフの看板を見かけたら是非中に入ってビデオコーナーを覗いてみましょう。レンタルより安いですし、たまにレンタル屋にはあんまり置いてない珍品が手に入りますよ。感想です。冒頭砂漠の地平線を斜めに切り取って…

サマーウォーズ

北見さんと記事被っちゃうけど、この映画に対してはいろいろ言いたいことがあったので、ご容赦願いたい。 あらすじについてはもう解説しない。あと、見たことない人にはチンプンカンプンだと思う。 この映画にはいわゆる「三種類のヒーロー」が登場している…

サマーウォーズ

DVDで再見したので書いてみる。 4年前。大学一年生の9月に「時をかける少女」を安田と元ろーにんがい幹事長と三人で見に行ったんだっけ。実は「時をかける少女」以前に細田守作品を見ていたらしい。劇場版「デジモン」。当初はデジモンなど全く見ておらず…

公開は2008年。

なんだかんだと言い訳をし、結局ずっと見てこなかった僕のために日テレが先日地上波で流してくれたものの、そのナイスパスもゴール前で鮮やかにスルー。ようやく重い腰を上げ、DVDを借りて、見た。見ましたよ。ええ。(なんか工藤っぽいな…)…。見終わっ…

バレンタインデー(ゲイリー・マーシャル監督)

インド料理が好きだ。しかし、インド料理屋というのは一体何なのか。 インド料理を拵えて客に提供する店の総称ということにでもなるだろうか。だが待とう。そんなダラけた定義が許されるほど世の中甘かっただろうか……? 何が言いたいのか。簡単だ。すなわち…

インビクタス 負けざる者たち(クリント・イーストウッド)

ラグビーとは「立ち上がる」スポーツである。タックルで倒されようとも選手たちは再び起き上がり、ボールを前進させていかなければならない。そこで「立ち上がる」事の出来ない者たちは無様な敗者として退場することを余儀なくされるだろう。 『インビクタス…

抱擁のかけら(ペドロ・アルモドバル監督)

映画が投射されるスクリーンは、観客たちを虚構の世界へと包み入れる膜でもあり、観客たちをそれぞれにとっての現実へと留めたままにする壁でもある。 ペドロ・アルモドバルは『抱擁のかけら』の一場面で、スクリーンのその両方の側面を、ぶつけ合わせる。そ…

恋愛日記(フランソワ・トリュフォー)

おもしろい!尋常じゃない脚フェチ映画恋愛日記 [DVD]出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン発売日: 2008/02/22メディア: DVD購入: 2人 クリック: 16回この商品を含むブログ (13件) を見るトリュフォーもロマンポルノ撮…

マンハッタン殺人ミステリー(ウディ・アレン)

ウディ・アレンの最高傑作かもしれない。いや、ウディ・アレンの最も面白い作品を傑作と呼ぶのは誤りである。なぜなら、ただひたすら面白いウディ・アレン映画とは、ウディ・アレンとダイアン・キートンの掛け合いが面白いだけで成り立っている映画のことだ…

サンライズ(F.W.ムルナウ)

都会から来た女に誘惑された男は、妻を舟から突き落として溺死させることを決める。翌日、妻を乗せた小舟を湖へと漕ぎ出す。この時、男の背後に広がる、光を反射してきらめく水面の美しいこと、眩しいこと。愛する人を殺すには、あまりにも明るすぎる。なぜ…

華開く束芋 —四点の新作について—            角尾 宣信

キャンベルスープのポスターを作品にしたウォーホルは、彼の時代を「見えるように」しようと努め、その戦略として、あらゆるものを平坦なポスターイメージに押し込めてしまった。そもそもキャンベルスープ自体、「平」の字が憑きまとう。味が平凡、食べ方も…