崖の上のポニョ

崖の上のポニョ』です。DVD発売記念ってことで。
ジブリラヴァーの一人、尾崎です。

内容的には、アンデルセンの童話「人魚姫」がベースになっていると思いますが、ほかのジブリ作品の例にもれず、メインテーマは「親の不在と子供の成長」「人間と自然の調和」でしょう。

あと、この物語は、『となりのトトロ』ときれいに対称になってますよね。『トトロ』が男性的な森(山)のイメージとすれば、『ポニョ』は女性的な海の物語。そして前者が男親と娘の物語であるのに対して、後者は女親と息子の物語である。そしてどちらも親の喪失とそれを補填するかのような子供(たち)の成長、森と海の違いはあれど子供にしか見えない自然の形とそこに何の抵抗もなく調和していく子供(たち)というメインテーマからはズレがない。もちろん『千と千尋の神隠し』や『風の谷のナウシカ』なんかでも同じことが言えるわけですが、この二つがやっぱり一番わかりやすい。

そしてポニョにはさまざまなジブリ作品の足跡が見られる。例えば、母親の「リサ」は『魔女の宅急便』のパン屋のおかみさん「おソノ」のようだし、海の魔法使い「フジモト」が魔法を使う様子は『ハウルの動く城』の「ハウル」に似ている。海中に沈んだ街を古代魚たちが泳ぐ様は『風の谷のナウシカ』の腐海と蟲たちを彷彿とさせるし、魔法のカギがキスであるというラストシーンは『紅の豚』と同じモチーフである。他にも他作品との類似点はキリなくいくつでも挙げられるが、そもそも、このように様々なジブリ作品の系譜を踏まえている、ある種のセルフパロディ的なスタンスそのものが『ゲド戦記』に通じている。

さて、それでは『ポニョ』特有の要素はなんでしょうということになるわけですが、ひとつには「絵のタッチ」というのが挙げられると思います。CGがこれだけ幅を利かせている昨今のアニメにおいて、『ポニョ』はあえて手書きを貫き通している。それも特に背景画などは色鉛筆を用いた素朴で優しい絵になっている。これがこの作品にとって非常に有効に働いている(ジブリには珍しい海中の描写や、崖の上の家の温かい雰囲気などなど)。
もうひとつは「母親」の存在が強く描かれている。これまでジブリ作品の中では母親は全く描かれない(『天空の城ラピュタ』『風の谷のナウシカ』)か、描かれたとしても代理(『もののけ姫』『魔女の宅急便』)や喪失(『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』)の対象になる場合が多かった。今回も一応喪失の対象になってはいるものの、その存在感は他の作品とは一線を画す。とくに耕一とのモールス信号でのやり取りがとても良い。ポニョや宗介が「だーい好き!」と素直に感情表現するのに対して、リサは耕一の「あいしてる」に対し、うまく返すことができない。そのむくれ具合は逆にリサの子供っぽさを強調する。なんとなく『耳をすませば』の「雫」を思い起こさせる。

そんなわけで最後にこれを読んでいる人たちにリサのように愛の信号を送って閉めたいと思う。

BAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKABAKA……