サンライズ(F.W.ムルナウ)

 都会から来た女に誘惑された男は、妻を舟から突き落として溺死させることを決める。翌日、妻を乗せた小舟を湖へと漕ぎ出す。この時、男の背後に広がる、光を反射してきらめく水面の美しいこと、眩しいこと。愛する人を殺すには、あまりにも明るすぎる。なぜ残酷なシーンがこんなに美しく撮られなければならないのか?美しさと残酷さの並立が、妻の夫に対する愛と絶望の並立に重なる。妻が夫に怯える理由は、自分を殺そうとしたことだけではない。このあり得ない並立を受け入れられないからだ。夫は私を愛してる、かつ、夫は私を殺そうとした…
 この作品は水が重要である。湖、涙、ワイン、大雨、再び湖。話の転換点には水が過剰なまでの輝きを伴って必ず現れる。そのたびにこっちも涙する。そして、妻の目に注目。あれほど正確な目の演技は見たことが無い。


立ち止まって考えてみる。
もしかするとストーリーはありきたりかもしれない。根拠のないご都合主義と批判されるかもしれない。

しかし、だからこそ凄いのだと言いたい。ありきたりな物語を観客に信じさせることの難しさ。
そもそも、根拠のなさを批判をする人は、男の左手薬指には最初から最後までずっと結婚指輪が輝いているのを見逃しているのだ。
                                                          
  玉田

サンライズ クリティカル・エディション [DVD]

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